月の真裏の白い夢

南場朝海のファーストアルバム「月の真裏の白い夢」がいよいよ明日発売になる。

20年前、僕は新バンド結成の為、メンバー募集のチラシをスタジオやCDショップに貼った。
チラシに書いた文句は「月に行きたい人募集」
(唯一応募して来たのが、turbo-eyeの服部君)
その話をすると「それ見てたら私も絶対応募してる」と言う南場朝海。
その言葉は冗談でも気を使っているのでもなく、彼女があと20年早く生まれていて、
それを見ていたら間違いなく応募して来ていただろうなと僕も思う。
そんな彼女が何の力に引っ張られたのか、僕が講師をしていた専門学校に遥々函館から入学してきた。
絶対音感があったり、複雑なコードでも楽器を触らずすぐに聴音できるといった特技?を持っていたりと、
音楽が大好きで音楽と仲良しな人なんだな、という事は授業の中ですぐに解った。
そして彼女が2年になった頃、初めて彼女の楽曲を聴いて、その見方が浅はかだったと気付いた。
予測不可能なメロディーラインと僕の中の常識を覆され続けるコード進行。
しかしそのアンバランスさが絶妙なバランスでポップスとして成立していて(ここ大事)
そこから色彩や風景や匂いがどんどん広がっていく。
心地よい浮遊感とある種のトリップ感覚は自分の世界観と近いものを感じたが、
彼女の音楽は唯一無二のオリジナルな世界観で、この世の誰にも似ていない特別な宇宙だった。

僕の中で彼女は「音楽好きな人」から「音楽のヤバい部分を知っちゃっている宇宙人」という認識に変わり、
その瞬間、彼女をこっちの世界に引き込まないといけないという謎の使命感に襲われた。
タイミングよくSymmetrieZの原型となるプロジェクトが始まり、迷わず彼女を巻き込んだ。
SymmetrieZでの彼女の活躍はご存知のとおり(いないと一番困るメンバーと言われている)
バンド結成から数ヶ月、サシで飲みに行く距離感になった頃「ソロ音源を作ろう」と話を持ちかけ(@吉祥寺もも吉)プロジェクトがスタート。

自宅でピアノと歌だけのデモを制作する中で、改めて彼女の音楽の奥深さを知った。
音楽そのものももちろんだが、その声の持つ不思議な安心感は、
このディープなハーモニーの中で心地のよい違和感となる。
そして言葉選びのセンス、ユーモア、語感の心地良さに至るまで、全てが満たされていた。

それから紆余曲折を経て、結果的には3年以上も時間がかかってしまったのだが、
その頃のミーティングでの選曲メモなんかを改めて見てみると、
今のこのタイミングでリリースする事がベストだったのだと思う。
彼女自身の作品力、演奏力、そして歌の力が本当に説得力を増したし、
特にこの一年で、自分の世界観という所のピントが完全に合ったのだなと感じた。

決して多くの人々に受け入れられる音楽ではないかもしれないけれど、
僕が尊敬するミュージシャン達からの彼女を賛辞する言葉の数々が、
音楽人としての南場朝海の奥深さを物語っている。
ここまで色々と書いておきながら、音楽を文章で説明するのは本当に難しいので、
Youtube動画だけでも良いので是非とも彼女の世界観に触れてみてほしい。


とにかく僕は彼女の音楽の大ファンで、それを好き勝手アレンジしたりギターを弾いたり、
大好きなミュージシャン達を呼んで世界をググっと広げてもらったり、
間違いなくこのプロジェクトを一番楽しんじゃってたと思う。
制作の中で子供の様に楽しんでしまったものだから、彼女も安心しきったのか、
めでたく僕に敬語を使う事も無くなった(笑)
あ、これは嬉しい変化ね(笑)

そんな空気感の中で作られた初めてのアルバム「月の真裏の白い夢」
南場朝海の宇宙が凝縮された全6曲。
これは同時に今の僕の最もニュートラルな世界観でもあるのです。

                       永田"zelly"健志


「渇いてしまった大人たちが今聴くべき最新のJ-POPはこれかと思います。」
              Hattori Utopia( turbo-eye、選曲家)